「駆け引き・開き直り」
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近田 伸吾 |
こんにちは近田です。おっちゃんチームのページが独立してからレポートを書くのは初めてですね。 8月17日から19日にかけて、神奈川県等々力陸上競技場にて関東選手権が開催されました。東京都を除く関東7県の各選手権6位までと、推薦選手がこの大会に出場することができます(東京都は東京選手権が単独で開催されます)。選手権者(優勝)は来年の日本選手権の出場権が与えられ、2、3位になると日本選手権参加B標準で出場可能になる大会なのです。かなり重要な試合です。 高さ競技に付き物なのが「駆け引き」です。私の中で駆け引きとは「内的要因」と「外的要因」があると考えています。まず「内的要因」とは、自分自身の調子や体調を見極めて、最初の高さを決定したり、パスを決定したりする「自分との駆け引き」です。そして「外的要因」とは、天候や相手関係を考え、その高さをトライするかパスをするかなどを決定する「外部との駆け引き」です。 今回、走高跳は18日の16時半スタート。エントリーが42名と非常に多く、最初の高さが1m85と関東選手権にしては低い高さからスタートなので、2つのピットで行なわれました。実際には欠場者が何名かいて詳しい人数は分かりませんが35名程度でした。 公式練習が1m80と2m00とあり、私は2m00を選択。1本目は助走が安定しなかったものの成功。2本目は助走が安定しないうえに失敗。2m00から競技を開始しても良かったのですが、不安定な助走を修正するために1m95から競技を開始することにしました。公式練習で2m00を越えた選手が私のピットで2人いました。気になるのは隣のピットの状況。知り合いに聞くとそちらにも2人いたそうで「4強対決か?」と勝手に妄想していました。この時点でかなりの駆け引きが行なわれているのです。 しかし、そう思惑通りにはいきませんでした。私自身にトラブルが発生! 1m95の跳躍で踏み切り脚全体(左足)が痺れを感じ、2m00の跳躍で踏み切り脚下腿部(ヒラメ筋=ふくらはぎ)が攣ったのです。いずれも1回目で成功。待ち時間は水分補給やストレッチを行い回復に努めましたが、状況はよくありませんでした。 そんな大きな不安要素を抱えたまま2m05の試技が開始されました。「無理して悪化したら秋のシーズンは大丈夫なのか?」「今日は駄目なんじゃないか?」など不安な考えが頭を過りました。こんな状態では良い跳躍が出る訳も無く1、2回目は失敗。そして3回目。成功しなければ日本選手権への道は絶たれる崖っぷちの状況。 バーへ挑んでいく近田さん。歴戦の勇者の戦略とは? これに似た状況が過去ありました。それは高校3年時の北関東大会で、スタートの1m85を2回失敗し、次を失敗すればインターハイへの道は絶たれるという状況でした。その時は3回目に成功し、そこから流れを呼び戻して3位でインターハイへ進みました。「開き直り」これが私を救ったのです。そして今回も開き直ってみて「失敗しても構わない。積極的に勝負しよう。」と心で誓い、時間ぎりぎりまで集中して助走開始。踏み切りマットに落ちてバーを見ると揺れているが落ちず成功。「自分自身の駆け引き」に勝った瞬間です。 この高さを成功したのは私を含めて6名でした。 |
次の高さは2m08。ここで「俺サミットinだーちか」(笑)が開催! ↓ 一部始終をご覧ください! 「このままでは6位。2m08は3人パスして2人がトライか。さあどうする?2m05が3回目だったのでパスして少し休憩し2m11で勝負するのか、ここを成功すればパスした3人にプレッシャーを与えられる…むむ!待てよ!2m08を俺だけ成功して2m11が全滅だったら!!!よし、この高さは跳ぶぞ!」 そして「俺サミット」閉幕!その場に居合わせた星野監督も2m08へのトライに賛成でした。 2m08の1回目は3人とも失敗。続く2回目。ここで今日一番の「会心の1本」が飛び出し成功!隣のピットでは「近田さんしぶといな…」との会話があったとか。結局この高さを成功したのは私1人だけ。「いいぞ!思惑通りだ。」そして2m11へ。 2m11は4人の挑戦ですが、各ピットに2人ずついる状況。1回目は力んで失敗。直後に車田選手(TAP TC・埼玉)が成功!俺サミットの思惑が一瞬にして砕け散ってしまいました。3回目には前回の試合でジンクスを打ち破った「手拍子」を発動! 助走はまずまずだったのですが失敗。結局2m11は1人だけ成功でこの記録が優勝記録でした。 私は今期自己最高記録の2m08で2位を確保することができました。今回の「2m08」という記録は個人的に価値のある記録と感じています。昨年の最高記録が2m05と、2m05より高く跳んだのは本当に久しぶりだったのです。 過去に出場した関東選手権は勝負に行って2位や3位と悔しい思いをしたのですが、今回は戦前のランキングでは8番にも入っていない状況での2位。今回は自分自身の不振を乗り越えての記録と順位なので心の底から嬉しかったです。 近田さん(左)久々の日本選手権出場権獲得です! ちなみに社会人になってから関東選手権に4回出場していますが、なぜか4回とも2m08なのです。相性がいいのか悪いのか…さて、今回の2m08は日本選手権B標準に到達し、さらに3位以内になったので、日本選手権への道が開けました。しかし安心はできないのです。それは、今年の日本選手権参加者が30名を越えていたので、来年は標準記録が上がりそうな気がするからです。 次は全日本実業団に出場するので更なる記録の向上を狙いたいです。 もちろん県南選手権も狙っていますよ。 100mのビーイング新記録をね! |
ちかだ しんご |
(2007/9/2 update)